EU離脱交渉 不透明感が拭えない英国と見通しの明るいEU圏

EU離脱交渉 不透明感が拭えない英国と見通しの明るいEU圏
2017/12/06

欧州かわら版 2017年12月号

EU離脱まで残りあと16ヶ月

英国では2016年6月のEU離脱を問う国民投票で、離脱派が勝利し、今年の3月29日に欧州委員会にEU離脱を通知しました。
それから9ヶ月。6月から欧州委員会と英国の間で会合が月に1回開かれていますが、離脱交渉は思うように進んでいません。離脱後の通商協定の協議は経済面で非常に重要ですが、EU側が提示する3つの協議事項に十分な進展がないと通商協議には入らないとしているため、着手出来ない状況です。交渉期限は2019年3月29日。刻々とその時期が迫っています。

通商協定協議に入るための3つの条件

  1. 清算金に関する十分な進展
  2. 在英EU市民の権利保護に関する十分な進展
  3. アイルランド国境問題に関する十分な進展

第一の関門・・・清算金

「清算金」とは、EU共通予算の英国の分担金や在英EU二機関の移転費用などの積算額です。揶揄して「手切れ金」などとも言われています。
EU側はこの清算金を600億ユーロ(約8兆円弱)と考えている一方で、英国側は200億ユーロ(約2.6兆円)を主張していました。両者の間には大きなかい離があり、どこを着地点とするか話し合いが続けられてきました。
しかし、ここにきて、態度を硬化させていた英国側が譲歩を始めました。従来主張していた200億ユーロから500億ユーロへ増やすと、12月4日のメイ首相とユンケル欧州委員長との会談で提示しました。
交渉期限が迫るなか、EUとの合意なしでの離脱を避けるため、通商協定の協議に少しでも早く入りたい英国の焦りが垣間見れます。

第二の関門・・・在英EU市民の権利保護

従来、メイ首相は経済事情よりも移民制限を優先する「ハード・ブレグジット」を主張していましたが、その後の総選挙で敗北。路線修正を求める声が強まったことなどから、経済面を重視する「ソフト・ブレグジット」へ移行してきました。
英国に居住しているEU市民の権利保護に十分な進展がないと、通商協議に入れません。年内に道筋の目途を付けるために、英国側がEU市民についても一定条件のもと、離脱後も今と同じ福祉などの権利を認める方向で調整しているとの報道が出ています。

第三の関門・・・アイルランド国境問題

英国の北アイルランドと陸続きのアイルランドとの国境の問題です。現状、毎日3万人が往来し農産物の輸出入も盛んです。英国がEUから離脱して、厳格な国境管理が復活すれば、経済や社会への影響は甚大です。
英国は「開かれた国境を維持する」と言いますが、具体策が見えなかったため、アイルランドから反発されていました。しかし、英国が現行ルールに配慮する妥協案を示したことから、進展がみられました。

今年中に協議開始の目途を付けたい通商協定

12月14~15日にブリュッセルで開かれるEU首脳会議で、通商協議入りが承認されるよう、英国はEUに対して態度を軟化しました。
EUは国内の議会承認手続きなどを踏まえ、2018年秋を事実上の交渉期限とみており、交渉期間は1年を切っています。ここで承認されなければ、さらにハードルの高い通商交渉の行き詰まりにつながり、何も定まっていないまま、英国がEUから離脱する最悪のシナリオも考えられます。

英国は問題山積、ユーロ圏経済は良好

英国は交渉のヤマである通商協定が始まる前から思ったような道を辿れていません。英市場は先行き不透明感が企業の景況感に影響を与えたり、ポンド安を招く要因となっています。
一方、ユーロ圏の経済環境は非常に良好です。消費や設備投資などの内需が好調で、回復基調が強まっています。背景は雇用の回復で失業率は2009年2月以来の水準に低下、ECBの金融緩和で企業の設備投資意欲を下支えしています。
英国がEUを離脱する道のりに不透明感が広がる一方で、EU圏の経済見通しは明るいのが現状です。

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