英国総選挙でEU離脱への道のりはより困難に

英国総選挙でEU離脱への道のりはより困難に
2017/06/12

英国の有権者は、EU 離脱の協議が始まる前の選挙で、勝利に賭けたメイ⾸相に大打撃を与えた

英国のメイ⾸相が、欧州連合(EU)とのEU離脱(ブレグジット)の協議で、彼の⽴場をより強固にしようとした試みは、先週、保守党が議会で過半数を失ったことで裏⽬に出ました。選挙結果から⽣じるリスクは、本質的には英国内のものですが、「ハングパーラメント(過半数を取る政党がない状態、「宙ぶらりんの議会」)」という結果は、EU離脱に向けた視界を悪化させることになります。⼀⽅、欧州中央銀⾏(ECB)は、ユーロ圏経済が着実なペースでの成⻑を維持しているため、⾦融政策の正常化に向け、景気刺激プログラムの段階的な縮⼩のための⼩さな⼀歩を踏み出しました。

EU 離脱の道のりはさらに混乱

英国のEUからの離脱への道のりは、先週⽊曜⽇の選挙でさらに不透明になりました。メイ⾸相がEU離脱交渉に向けて政権基盤を強化するために4⽉中旬に実施を決めた選挙は失敗に終わり、明確な勝者は現れませんでした。
メイ⾸相率いる保守党は議会での第⼀党を維持したものの、過半数を失いました。保守党は改選前の331議席から318議席へと議席を減らし、過半数に必要な326議席には届きませんでした。コービン⽒が率いる労働党は、下院での議席数を232 議席から262議席へと伸ばしました。スコットランド⺠族党は(SNP)も56議席から35議席へと減らし、スコットランドがイギリスからの独⽴を問う国⺠投票へのモメンタムが⼩さくなりました。

英国の最⼤のリスク

選挙の潜在的な影響はグローバルのものではなく、主に英国国内のリスクであり、グローバルの⾦融市場に⼤きな影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。選挙後の最初の市場の反応でも、選挙の影響は英国の⾦融資産、特に、⽶ドルやユーロに対して下落した英ポンドで⾒られました。

今後の不確実性が増したことで、英ポンドへの圧⼒は残ることになりそうです。英国株で⾒ると、英ポンド安は海外売上⽐率の⾼い企業にとってはプラス材料であり、⼀⽅、内需や消費に依存するセクターにはマイナス材料です。この⾒⽅は、⾦曜⽇の株式市場でFTSE100指数が0.7%上昇した⼀⽅、FTSE250中型株指数が0.7%下落したことにも反映されました。

連⽴政権の可能性

英国の政治的な不確実性は選挙前よりさらに増しています。下院の650議席の過半数を占める政党がない「ハングパーラメント」という結果は、保守党が連⽴政権を組むか、少数与党政権が発⾜することを意味します。メイ⾸相は、⾦曜⽇の午後、⽊曜⽇の選挙で10議席を獲得した北アイルランドの⺠主統⼀党(DUP)に協⼒を仰ぎました。⼀⽅で、メイ⾸相の党⾸として、また⾸相としての地位は疑問視されています。⾸相(党⾸)辞任を求める声は⾼まっており、もし辞任した場合、保守党は改めて党⾸選挙を⾏うため、EU離脱戦略に対する不透明感がさらに増
すことになります。

EU との協議開始が遅れるかもしれない

EU離脱の決定を取り巻く不確実性はさらに増しています。新政権の形がブレグジット交渉に⼤きな影響を与えるでしょう。選挙の影響により、英国がEUと交渉できるスピードと政治的な決断を下す⼒は確実に弱まったと思われます。英国とEUの間の協議は6⽉19⽇に始まる予定ですが、先週⽊曜⽇の結果によって遅れる可能性もあります。

交渉結果として何も得られない可能性が増す

⼀⽅で、ソフトブレグジットの可能性が⾼まるかもしれません。例えばEU圏内での貿易上の特権を維持するという柔軟な姿勢は、保守党が議会で過半数の⽀持を得るための助けになるかもしれません。その⼀⽅で、交渉結果がゼロに終わる可能性も⾼まったようです。EUとの強硬な交渉結果が議会の他の政党の必要な⽀持を得られない⼀⽅で、保守党の強硬派やメイ⾸相のEU交渉のパートナーが受け⼊れられるソフトなアプローチを⾒つけ出すことは、困難または不可能かもしれません。

ユーロ圏の政治リスクは 低下してきている

ユーロ圏では、選挙シーズンが⼀息つき、政治⾯でのリスクは後退すると思われます。⼤きな要因としては、フランスのマクロン⼤統領の与党である「共和国前進」が議会の過半数を獲得する可能性が⾼まったことが挙げられます。また、イタリアでは選挙改⾰法を巡る主要政党の合意が⽊曜⽇に崩れました。この改⾰法では⽐例代表制ではあるものの、得票率が5%未満の政党の議席を排除するもので、法案化されれば選挙が前倒しされる可能性が⾼まっていました。この結果を受けてイタリア国債の利回りは低下しており、今回の(選挙が前倒しされない)結果に対して市場が前向きな反応を⽰したと考えられます。

ECB は出⼝にジワリと向かう

先週、欧州中央銀⾏(ECB)の政策理事会がエストニアの⾸都タリンで開かれ、今までになく強いユーロ圏経済を背景に、ECBは⾦融緩和策からの出⼝に向けた慎重な⼀歩を踏み出しました。ユーロ圏経済の着実な成⻑は、ECBが続けてきた量的緩和(QE)やその他の⾮伝統的な⾦融政策の解除を求める声を強めています。

こうした声を承知する⼀⽅で、ECBは、⽶連邦準備制度理事会(FRB)がQEを解除しようとして⻑期⾦利の急騰を招いた2013年5⽉のいわゆる「テーパー癇癪」を忘れてはいません。テーパー癇癪は過去5年間で最も⼤きな債券市場の調整を引き起こしたため、ECBは市場がユーロ圏内で同様の反応を起こすことを避けたいと思っているはずです。

漸進主義は引き続きECBでの合⾔葉となっています。ECBは今回、インフレの下⽅リスクに関する⽂⾔を声明⽂から除外することで出⼝に⼀歩近づきました。ECBの理事会は政策⾦利がさらに低下する可能性を声明⽂から除外する⼀⽅、景気が悪化すれば債券購⼊枠の拡⼤や購⼊債券のデュレーションの⻑期化する可能性は残しました。

当社では、債券購⼊額の縮⼩に関する⽂⾔が9⽉に盛り込まれると予想しています。現在の低い利回り⽔準を勘案すると、ECBがタカ派⾊を強めた場合、株式市場よりも債券市場に対する影響が⼤きいと考えます。ECBがQEプログラムの終了に向けたアプローチを開始した場合、癇癪のような市場急落の可能性は低く、年末にかけて利回りは緩やかに上昇すると思われます。当社の基本シナリオは、2018年1⽉から6カ⽉かけて、ECBの緩やかなQE解除が⾏われるというものです。

⽶国のFRBに関しては引き続き緩やかな⾦融引き締めを続けると⾒ており、6⽉と年内にもう⼀度利上げを⾏うということを基本シナリオとしています。この政策を背景に⽶国の債券利回りは現状⽔準からやや上昇するとみていますが、⾦融セクターを⽀えるためには利回りの上昇は必要だと思われます。